性感染症の中でも、最も恐れられているのがエイズです。エイズ(AIDS;後天性免疫不全症候群)は、エイズウイルス(HIV)の感染が原因で、免疫が正常に機能しなくなる病気でカリニ肺炎、カンジダ症、カポジ肉腫などの様々な病気を合併します。
潜伏期間は10年程度と言われています。10年ほどして発症してはじめてエイズと呼ばれるようになります。即ち発症前のHIV感染者の段階ではエイズ患者とは呼びません。発症すると、持続性全身性リンパ節腫張、エイズ脳症、悪性腫瘍、体重減少、発熱、下痢、白血球減少、リンパ球減少などの症状がでます。こうなると免疫機能がかなり低下している為に、正常な状態ではなんでもないような弱い病原体や、すぐに治るような病気でさえも押さえ込んだり治したりする事が出来なくなってしまい、その病気の症状が悪化して最後は死に至ります。
WHOの報告によると、2001年末までに全世界の推定HIV/AIDS患者感染者数は4,000万人、死者2,480万人とされており、患者感染者数が最も多いのはサハラ砂漠以南アフリカで、続いて南・東南アジア、南米の順になっています。
欧米等の先進諸国では、徹底した感染予防キャンペーンや性教育などで、新規のHIV感染者は減少傾向にありますが、日本は先進諸国中で唯一感染が拡大傾向にあります。
厚生省の2005年度の統計では2004年につづいてHIV感染者とAIDS患者合わせて1000人以上が新たに感染しました。同性愛者の感染率が再上昇し、若年者層での増加が目立ちます。
現在、日本のHIV感染者は薬害エイズによる感染者も含めると、報告されているだけで1万人に達しており、検査を受けていない人数を考慮すると全国で数万人にまで達しているとも言われています。
レトロウイルス科に属するヒト免疫不全ウイルス(Human immunodeficiencyvirus)で、血清学的にHIV-1型とHIV-2型に分けられます。
主な感染経路は、性行為、注射の回し打ち、輸血、母子感染です。感染源は血液、精液、膣分泌液、母乳の4つで、粘膜、傷口などから、これらの体液を通してエイズウイルス(HIV)に感染します。
エイズウイルス(HIV)に感染しても、すぐにエイズ(AIDS)を発症するわけではありません。感染からエイズ(AIDS)発症までに、短い人では数ヶ月、平均8~10年という長い潜伏期間を経ます。次いでエイズの前駆症状というべき、リンパ節腫脹や発熱、体重減少、下痢が続くといったエイズ関連症候群(ARC)がみられることがあります。さらに病気が進行すると体の免疫力が低下し、カリニ肺炎、カンジダ症、カポジ肉腫などを発病し最終的に死を招きます。
HIVに感染して1~2週間程度で、全身倦怠、発熱など軽い風邪に近い症状が現れます。また発疹や口腔カンジダを生ずる場合も多いです。しかし、こういった症状に気づいても単なる風邪として見過ごすことも多く、また症状が出ない人もいます。その一方で重症化する例も確認されており、多発性神経炎、無菌性髄膜炎、脳炎症状などの急性症状を示す場合もあります。重症例を除き、これらの症状は1週間から長くても2~3ヶ月程度で収まります。
また感染して数日間は血中のウイルス濃度は非常に高いですが、数週間程度ですぐに抗体が産生されウイルス濃度は激減します。一般のHIV感染検査はこの産生される抗体の有無を検査するため、感染後数週間、人によっては1ヶ月程度経過してからでないと十分な抗体が測定されないため(ウィンドウ期間)、検査をすり抜けることがあります。
多くの人は急性感染期を過ぎて症状が軽快し、だいたい5~10年は無症状で過ごします。この間、見た目は健康そのものに見えますが病状は着々と進行しています。またこの期間に自己免疫性疾患に似た症状を呈することが多いことも報告されており、帯状疱疹を繰り返し発症する場合もあります。 無症候期にある感染者は無症候性キャリア(AC)とも呼ばれています。
血液中のCD4陽性T細胞がある程度まで減少していくと、免疫力低下症状を呈するようになります。多くの場合、最初は全身倦怠感、疲れやすい、体重が減った、下痢気味、発熱気味などのエイズ関連症状が現れてきます。また顔面の脂漏性皮膚炎なども、この時期に見られます。これらの症状になって医療機関を訪れ、検査結果からHIV感染が判明するケースがほとんどです。
その後、免疫担当細胞であるCD4陽性T細胞の減少と、同時に多くの日和見感染を生じ、ニューモシスチス肺炎やカポジ肉腫等の悪性腫瘍など、生命に危険が及ぶ症状が出てきます。また、HIV感染細胞が中枢神経系組織へ浸潤し、脳の神経細胞が冒されると精神障害や痴呆、記憶喪失を引き起こすこともあります。そして発病者の多くは感染症によって死に至ります。
定期的に医師の診断を受け、時期に応じた治療を受けることで発症を遅らせたり症状を軽くします。完全なエイズ治療薬はありませんが、近年エイズ発症を遅らすことで延命効果を得る治療法がめざましく進んでいます。
海外では非日常のためか、さまざまな誘惑に対して無防備になりがちです。不特定の人との性交渉は避けましょう。また性交渉ではコンドームを正しく使用して下さい。麻薬や覚醒剤の使用はやめましょう。注射の回し打ちだけでなく、口から麻薬を使用するときにできた傷からもエイズウイルス(HIV)に感染することがあります。
なお、途上国によっては、輸血製剤の安全性が確保されていなかったり、注射器など医療器具が不足しているために、HIVやB型肝炎に感染することがあります。長期滞在の場合、ケガや事故に注意することが大事ですが、安心できる医療機関を確認しておきましょう。
検査により早期に診断することが重要です。ただし、感染の危険のあった日から8週間過ぎなければ、抗体が上昇していないため、正しい検査結果が得られません。思い当たる日から最低でも8週間、一般的には3ヶ月をめどに(抗体ができるまでの日数が経過した後に)検査する必要があります。十分な期間を経ずに検査を受けた場合は、再検査すると良いでしょう。この期間でも、HIVに感染していれば他人にも感染しますので、注意が必要です。